歌が下手な歌手はなぜ愛される?音響解析と業界裏側から紐解く
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業界のデータ構造もこのパラダイムシフトを裏付けている。日本レコード協会が毎年発表する市場動向調査を見ても、デジタル配信とストリーミングの比率が激増する中で、リスナーのエンゲージメントが高いアーティストは、必ずしもクラシックな発声法を収めた実力派ばかりではない。SNS時代のバズを生むのは、一瞬で誰の声か分かる突飛な声質や、感情の揺れがダイレクトに届くボーカルスタイルだ。
ヒットメーカーを擁する大手レーベルのソニー・ミュージックエンタテインメントをはじめとする音楽プロダクションのスカウト部門も、近年は「歌の上手さ」よりも「声の唯一無二性」を最優先事項として挙げている。音程やリズムはテクノロジーで補正できても、天性の声質や言葉を伝える温度感だけは後から付け足すことができない。酷評されようが個性を尖らせたアーティストこそが、結果としてロングヒットを生み出す時代になっている。